- 2026.04.28
- 2025年 食品衛生法改正で包装担当が知るべきこと|ポジティブリスト完全施行への実務対応ガイド

食品包装・資材担当者の皆様にとって、2025年は大きな転換点となりました。2020年から始まった「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度」の経過措置が2025年5月31日に終了し、6月1日から完全施行されています。
本記事では、改正のポイントを整理し、「実務の要点」を解説します。
-
2025年6月、何が変わったのか?
これまで日本の食品包装は、「有害なものを使わない(ネガティブリスト方式)」という考え方でしたが、現在は「安全が確認されたものしか使えない(ポジティブリスト方式)」へと180度転換しています。
経過措置の終了(2025年5月31日)
2020年以前から使用されていた材質については、5年間の猶予(経過措置)がありましたが、これが終了します。
- これまで: 「従来から使っているから」という理由で継続使用が可能だった。
- 2025年6月〜: リストに掲載されている物質のみを使用した製品である証明が必須。
-
ポジティブリスト(PL)の具体的な内容
ポジティブリストとは、一言で言えば「使用を認める物質のホワイトリスト」です。厚生労働省が告示したリストに載っていない物質は、原則として食品接触部位に使用できません。
リストは大きく分けて以下の2つのカテゴリーで構成されています。
① 基本ポリマー(樹脂そのもの)
プラスチックの主成分となる物質です。
- 例: ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など。
- 規制内容: 樹脂の種類ごとに、使用できる「重合体(ポリマー)」が細かく指定されています。
② 添加剤
樹脂の性能を向上させるために混ぜる物質です。
- 例: 酸化防止剤、可塑剤(柔らかくするもの)、帯電防止剤、着色剤など。
- 規制内容: 物質ごとに「どの樹脂に使ってよいか」や「最大使用量」が決められています。また、食品の種類(油脂性食品か、など)や使用温度(加熱用か、など)によっても制限がかかります。
-
「適合している素材」とは具体的にどんなもの?
「この素材はポジティブリストに適合している」と言えるためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
条件1:リストに載っている成分だけで作られている
使用されている全ての「基本ポリマー」と「添加剤」が、最新のポジティブリストに掲載されている名称と一致していること。
条件2:使用制限(スペック)を守っている
リストに載っていても、使い方がルール違反であれば不適合となります。
- 対象食品の制限: 「お酒(アルコール分が高いもの)には使ってはいけない添加剤」などが設定されている場合があります。
- 温度制限: 「100°Cを超える加熱調理用には使用不可」などの条件があります。
条件3:規格試験(溶出試験)に合格している
成分がリスト通りであることに加え、実際に食品に溶け出す量が基準値以下であることを試験で証明する必要があります。
- 材質試験: 素材そのものに含まれる有害物質(鉛やカドミウムなど)の量。
- 溶出試験: 擬似溶媒(水や酢酸など)に浸し、溶け出してくる物質の総量(蒸発残留物など)。
-
代表的な適合素材の例
日常的に目にする以下の素材は、多くがポジティブリストに適合するように製造されています。
| 素材の種類 | 主な用途(適合品の例) | 特徴 |
| ポリプロピレン (PP) | コンビニ弁当の容器、タッパー | 耐熱性が高く、電子レンジ加熱に対応したものが多い。 |
| ポリエチレン (PE) | ポリ袋、ラップ、マヨネーズ容器 | 柔軟性があり、低温にも強いため冷凍保存などに向く。 |
| PET | ペットボトル、透明なサラダカップ | 透明度が高く、ガスを通しにくいため飲料の保存に適す。 |
| 紙(合成樹脂コート) | 紙コップ、紙パック | 紙そのものは現在PL対象外ですが、内側のコーティング樹脂がPL適合である必要があります。 |
-
適合しているかどうかの確認方法
素材を見た目だけで判断することは不可能です。実務上は以下の書類で確認します。
- 適合証明書(確認・伝達事項): メーカーが発行する書類で、「この製品はポジティブリストに適合した原材料を使用し、規格基準を満たしています」という宣言文です。2025年6月以降は、この情報の伝達が法律で義務化されます。
補足:都インキの「におわなインキ」の場合 インキは現在「樹脂」ではないためPLの直接対象ではありませんが、都インキでは独自の自主規制に基づき、PL制度の考え方に準じた安全な原材料を選定しています。これにより、包装紙を通じて「適合素材」と組み合わせて使う際にも、全体の安全性を損なわない設計になっています。
-
包装担当者が「監査」で問われる3つのチェックポイント
法改正に伴い、内部監査や取引先からの監査において、以下の対応が求められます。
① 適合証明書(確認・伝達義務)の完備
「この包装材はポジティブリストに適合しています」という情報を、サプライヤーから受け取り、自社から販売先へ伝える義務(法第52条)があります。
- 実務のポイント: 既存の全資材について、最新の適合証明書(またはそれに準ずる保証書)が揃っているか棚卸しが必要です。
② 合成樹脂(プラスチック)への厳格な対応
現在のポジティブリスト制度の主対象は「合成樹脂」です。
- プラスチック製の袋、トレイ、ペットボトルだけでなく、「紙コップの内面コーティング」や「フィルムのラミネート層」も対象となる点に注意が必要です。
③ インキや接着剤の「移行(移り)」対策
インキ自体は現在、直接のポジティブリスト対象ではありませんが、食品衛生法全体の「規格基準」により、インキ成分が食品に移行してはならないと定められています。
- リスク管理: インキの成分が裏移り(セットオフ)したり、包装を透過して食品に付着したりしないか、科学的根拠に基づいた選定が求められます。
-
なぜ今、資材の見直しが必要なのか(リスク管理の観点)
もし不適合品を使用・販売した場合、以下のような経営リスクに直結します。
- 回収(リコール)コスト: 法令不適合による製品回収は、数千万〜数億円単位の損失を生む可能性があります。
- 社会的信用の失墜: 2021年のHACCP完全義務化以降、食品安全への消費者の目は厳しさを増しています。
- 取引停止: 大手流通や輸出先からは、PL制度への適合が「取引の前提条件」となっています。
不適合品使用による具体的リスク・シナリオ(想定)
シナリオ1:紙コップの「内面コーティング剤」がリスト外だった場合
自社で採用した紙コップの内面ラミネート樹脂に含まれる添加剤が、2025年6月施行のポジティブリスト(PL)に未掲載の物質であったことを想定したケースです 。
- 即時の製品回収(リコール): 食品衛生法違反となるため、該当する資材を使用した全製品の回収を余儀なくされます。回収費用、代替品の確保、廃棄コストにより、数千万〜数億円単位の直接損失が発生します 。
- 営業停止・行政指導: 保健所による立ち入り調査が行われ、重大な過失とみなされれば営業停止処分を受けるリスクがあります。
- サプライチェーンの断絶: 納品先の外食チェーンや小売店から「安全管理体制の不備」を問われ、全商品の取り扱い停止や賠償請求に発展する可能性があります 。
シナリオ2:インキ成分の「裏移り(セットオフ)」による風味劣化
包装紙の印刷面に使用したインキが、保管中に重なり合った内面(食品接触面)に付着し、そこから食品へ成分が移行してしまったケースを想定します 。
- サイレント・クレームの発生: 有害物質の基準値以下であっても、インキ特有の溶剤臭がお菓子やパンに移ることで「味が変だ」というクレームがSNS等で拡散される可能性があります 。
- ブランド価値の毀損: 一度「においがきつい」というイメージがつくと、長年築き上げたブランドの信頼回復には多大な時間と広告費が必要になります 。
- HACCP運用の不備: 2021年から完全義務化されているHACCPにおいて、資材選定という「前提条件プログラム」の管理不足として、外部監査で致命的な不適合と判定される可能性があります 。
-
包装紙・紙袋の付加価値を最大化する「におわなインキ」の役割
法令遵守(コンプライアンス)が「守り」だとすれば、「におい対策」は「攻め」の品質管理です。
特に食品の包装紙や手提げ袋において、食品衛生法とあわせて検討すべきなのが「におい移り」の問題です。
包装紙用インキで支持される「におわなインキ」とは
都インキが開発した「におわなインキ」は、包装紙向けインキにおいて高いシェアと信頼を誇ります。なぜ、法改正を意識する包装担当者に選ばれているのでしょうか。
① 法令基準+自主規制のクリア
「におわなインキ」は、印刷インキ工業会の自主規制(NL規制)に準拠しており、食品衛生法の精神に基づいた安全性の高い原材料で構成されています。ポジティブリスト制度下で求められる「安全な資材選定」という稟議の目的に合致しています。
② 「風味の劣化」というサイレント・クレームを防ぐ
食品衛生法では「有害物質の移行」を制限しますが、消費者が最も敏感に反応するのは「におい」です。
- 一般的なインキに含まれる溶剤臭や酸化重合による臭気は、油分を含む食品(菓子、パン、揚げ物など)に非常に移りやすい性質があります。
- 「におわなインキ」は、独自の技術でこの臭気を極限まで抑えているため、食品の風味を損ないません。
③ 監査時に説明しやすい「実績」
包装紙用インキとして検索上位にあり、多くの採用実績があることは、監査や社内承認において「妥当性の根拠」として強力な材料になります。「法的に安全であること」に加え、「食品の価値を下げない選択であること」を両立できるからです。
-
まとめ:担当者が今すぐ取り組むべきアクション
2025年6月の完全施行に向けて、以下のステップで進めることを推奨します。
- 資材の棚卸し: 現在使用している包装材(特に樹脂を含むもの)をリストアップする。
- 証明書の収集: 各サプライヤーから「ポジティブリスト適合証明書」を取り寄せる。
- インキのスペック再確認: 包装紙や手提げ袋において、インキ由来の臭気リスクがないか再評価する。
特に、直接食品に触れない外装であっても、積み重ねられた包装紙からインキのにおいが移行するリスクは常に存在します。安全性が当たり前となった今、**「おいしさを守るインキ(におわなインキ)」**への切り替えは、他社との差別化における最も有効な手段の一つとなります。
食品衛生法改正(ポジティブリスト制度)に関するFAQ
Q1. 2025年6月の完全施行までに、具体的に何を準備すべきですか?
A1. まずは自社で使用している全資材の棚卸しを行い、サプライヤーから「ポジティブリスト(PL)適合証明書」を取り寄せてください 。2025年6月1日以降は、経過措置が終了し、リストに掲載された物質のみを使用した製品であることの証明が必須となります 。
Q2. 印刷インキや接着剤は、ポジティブリスト制度の対象になりますか?
A2. 現時点では、インキや接着剤そのものはポジティブリストの直接的な対象ではありません 。しかし、食品衛生法全体の「規格基準」に基づき、成分が食品に移行してはならないというルールは適用されます 。そのため、裏移り(セットオフ)や透過が起きないよう、科学的根拠に基づいた資材選定が必要です 。
Q3. 「基本ポリマー」と「添加剤」の違いは何ですか?
A3. 「基本ポリマー」はポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などプラスチックの主成分を指します 。一方、「添加剤」は酸化防止剤や着色剤など、樹脂の性能を向上させるために混ぜる物質のことです 。どちらもポジティブリストで物質ごとに使用条件が細かく指定されています 。
Q4. 紙製の包装(紙コップや紙箱)も規制の対象になりますか?
A4. 紙そのものは現時点でポジティブリストの対象外ですが、内面に施されている合成樹脂(プラスチック)のコーティングやラミネート層は規制の対象となります 。これらがPL適合品であるか確認が必要です 。
Q5. 都インキの「におわなインキ」を採用するメリットは何ですか?
A5. 安全面では、印刷インキ工業会の自主規制(NL規制)に準拠しており、食品衛生法の精神に基づいた設計がなされています 。機能面では、食品への「におい移り」を極限まで抑えられるため、法的な安全(守り)と、食品の風味を守る品質管理(攻め)の両立が可能です 。
お問い合わせ・資料請求について
都インキの「におわなインキ」に関する技術資料や、食品包装における適合性に関するご相談は、公式サイトより承っております。法改正への対応と併せて、ぜひ品質向上にお役立てください。
